【基礎知識】付着力と粒子径の関係
3つの付着力と粒子径の関係
弊社でのこれまでの社内勉強会で、粒子間の付着に関係する力は下記の3つがあることを学びました。
3つの付着力
・液架橋力:FL≈π・τ・x
・ファンデルワールス力:FV={A/(24・z2)}・x
・静電気力:FCE=(π・σ1・σ2/ε0)・x2
また、これら3つの力は粒子径(x)が大きくなるほど3つの付着力が大きくなることも学びました。今回は、これらの付着力の強弱について学んでいきます。
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付着力と粒子径の関係
3つの付着力をグラフ上に表現すると上記のような図になるようです。なお、粒子径(x)以外の変数と定数は下記の数値を使用しています。
グラフ作成に使用した変数と定数
τ(液体の表面張力):0.072 (N・m-1)
A(ハマカー定数):10-19(J)
z(粒子間の隙間):0.4(nm)
σ(粒子の表面電荷密度):26.5(C・m-2)
ε(媒体の誘電率):8.85 x 10-12(F・m-1)
このグラフから粒子径(x)が0.1μmから1mm(1,000μm)の間では、液架橋力(FL)が支配的であることが示されます。また、以前に学んだ粉を手で触って「ザラつき感」を感じるか感じないかの境目の目安である粒子径10μmでは、液架橋力(FL)の次にファンデルワールス力(FV)が支配的となり、その次に静電気力(FCE)が支配的になることが示されています。
粒子径が1mm(1,000μm)以上では外挿により静電気力(FCE)が支配的になると推定されることから、発泡スチロールの粉(粒子径が1mm以上)が静電気で手にまとわりついた経験はグラフと合致しているように感じます。
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乾燥条件での付着力と粒子径の関係
粉を扱っている多くのユーザー様では湿度を管理されているので、乾燥状態での付着力について検討していくことにします。つまり、支配的だった液架橋力を消失させたグラフが上記のようになります。
粒子径100μm(0.1mm)でファンデルワールス力(FV)と静電気力(FCE)の交点が現れます。つまり粒子径100μm(0.1mm)より小さい場合は、粒子径が小さくなるに従ってファンデルワールス力(FV)がさらに支配的になっていくことが示されます。一方で、粒子径100μm(0.1mm)より大きい場合は、粒子径が大きくなるにしたがって、静電気力(FCE)がさらに支配的になることが示されます。
日常生活の経験から、粉と粉との付着が静電気力(FCE)が支配的なのだろうと直感的に感じてしまいます。ただ改めてグラフを見てみると、粒子径が100μm(0.1mm)より小さくなるに従って、日常生活でなかなか実感することのないファンデルワールス力(FV)が静電気力(FCE)よりも支配的になることは留意しなければならないことなのでしょう。ちなみにファンデルワールス力(FV)を小さくするには、粒子自身に表面装飾を施すなどして物質としての性質を変える以外に方法がないようです。
まとめ
3つの付着力の強弱を考えると、粒子径(x)が0.1μmから1mm(1,000μm)の間では、液架橋力(FL)が支配的であることが示されました。乾燥状態、つまり液架橋力(FL)が消失した場合は、粒子径100μm(0.1mm)を目安として、粒子径が100μm(0.1mm)より小さい場合はファンデルワールス力(FV)、大きい場合は静電気力(FCE)が支配的になることが示されました。手で触った際の「ザラつき感」の目安である粒子径10μmではファンデルワールス力(FV)の方が静電気力(FCE)よりも支配的であることも示されました。
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参考文献
「わかる!使える!粉体入門」山田昌治 著