【基礎知識】試料採取・試料調整・測定分析の概要(参考元:JIS M 8100)
【基礎知識】試料採取・試料調整・測定分析の概要(参考元:JIS M 8100)
日本産業規格JIS M 8100(1992)を参考に、測定分析に必要な「試料採取」・「試料調整」について整理してみましょう。
粉粒体の測定分析には、粒子径分布測定や成分分析など様々な方法があります。それらそれぞれの測定分析に適した「試験試料」量があり、測定分析の方法によって量が異なります。また一方で、粉粒体を「試験試料」とする際には、粉粒体の粒子形状、粒子径、カサ密度等の違いによって生じる偏析(Segregation)にも注意する必要があります。このため測定分析に適した粉粒体の「試験試料」量を得るには、「試料採取」や「試料調整」が重要な手順となるのでしょう。
試料採取・試料調整・測定分析の概要
「試料採取」・「試料調整」を経て測定分析に至る概要を、規格JIS M 8100を参考に下の図に整理してみました。ロットと呼ばれる測定分析の対象となる粉塊混合物を、偏析の減少を頭に入れながら「試料採取」や「試料調整」の手順を経て、各種の測定分析に応じた「試験試料」量へと導く流れです。ちなみに、ここで登場してくる「粉塊混合物」などの用語は規格JIS M 8100で用語の定義がされており、主な用語を次項にまとめてみましたので、用語の規格の中で定義された意味を確認しながら読み進めるのも良いかもしれません。
粉塊混合物であるロットから、スコップやペンシルと呼ばれる試料採取器を用いてインクリメントと呼ばれる単位量の粉塊混合物を得る手順が「試料採取」と言えるでしょう。このインクリメントを得る際、規格JIS M 8100では、原則として1動作で採取すると定義されています。1動作で採取されたインクリメントが、偏析を考えられた上で支障がないようであれば、そのまま「試験試料」として用いることも可能でしょうが、多くの場合は、その先の「試料調整」への手順が必要となるのかもしれません。
数回の「試料採取」の手順を経て集められた数個のインクリメントは小口試料として扱われ、さらに複数の小口試料を集められた試料は大口試料として扱われます。当初の粉塊混合物は、この「試料採取」の手順により「試料」として定義されると理解しても良さそうです。
「試料」となった粉塊混合物を、縮分/混合/粉砕する手順が「試料調整」ということになるでしょう。縮分の手順により、試料の量を減らすことが期待できます。また、混合により、試料を均一にすることが期待でき、粉砕により試料を細かくすることが期待できます。「試料調整」の手順を経て、粉塊混合物であった「試料」は、偏析の影響を最小限に抑えられながら、それぞれの測定分析に適した「試験試料」として得られることになります。これらの手順を経て、やっと適切な測定分析のための「試験試料」が得られるということになるのでしょう。なお、この「試料調整」で用いられる機器としては二分器、分割機、混合機、ふるい振とう機等が挙げられます。
粉粒体を扱う難しさの要因の一つとして、エンドユーザー様からよくお聞きする「偏析(へんせき)」という現象について、書籍「わかる!使える!粉体入門」を参考に整理してみました。 偏析という現象 粒子径の異なる2種類の粒子を容器内で均一に充填するこ…
JIS M 8100掲載の関連用語
「測定分析」の対象となる「ロット」つまり「粉塊混合物」から、試料採取器を用いてインクリメントを集める「試料採取」を行い、得られた小口または大口の「試料」を縮分/混合/粉砕などにより「試料調整」を行い、最適な量と偏析の影響が低減された「試験試料」を得るという一連の流れが測定分析のための必要な手順であると言えるのでしょう。ここで紹介した以外の事項についても、粉塊混合物のサンプリングの指針が規格JIS M 8100に詳細に示されていますので、ぜひご参考にされてみてはいかがでしょうか。
規格JIS M 8100で定義されている用語
・粉塊混合物
・ロット
・インクリメント
・小口試料
・大口試料
・試料調整
・縮分
なお、測定分析にはふるい振とう機を用いた粒子径分布測定、流動度測定、疎充填/密充填カサ密度測定、減少度測定、安息角測定などの他にも様々な機器や方法が挙げられます。
参考文献
JIS M 8100「粉塊混合物-サンプリング方法通則」日本規格協会 発行
「わかる!使える!粉体入門」山田 昌治 著