【基礎知識】偏析(へんせき)という現象

粉粒体を扱う難しさの要因の一つとして、エンドユーザー様からよくお聞きする「偏析(へんせき)」という現象について、書籍「わかる!使える!粉体入門」を参考に整理してみました。

偏析という現象

「偏析」という現象
粒子径の異なる2種類の粒子を容器内で均一に充填することができたとします。容器内の上下または左右の位置において、大きい粒子と小さい粒子が比較的均一に配置しているような状態です。

その後、この容器に振動や衝撃といった外圧を加えると、大きい粒子は容器内の上方へ、小さい粒子は容器の下方へと移動してしまいます。この現象は「偏析(へんせき)」と呼ばれています。英語では「segregation」と呼ばれているようです。

偏析の要因

偏析の要因
このような偏析という現象の要因とされているのが、下記の3つと考えられているようです。

偏析の要因
・粒子の「大きさ」の違い
・粒子の「密度」の違い
・粒子の「形状」の違い

上記の「違い」を要因として、粒子の「移動速度」が異なることで偏析という現象が生じると書籍では説明されています。

同じ成分(同じ密度や同じ形状)でも粒子径が大きいか小さいかの違いがあれば、偏析が生じてしまうということです。また粒子径が同じで、形状が同じでも、成分の違いなどにより密度が大きいか小さいかの違いがあれば偏析が生じてしまうということになります。さらに成分も同じで密度も同じ、加えて粒子の大きさも同じでも、粒子の形に違いがあれば、偏析が生じるということになります。
このように見ると、成分が複数からなる粒子の混合体の場合、偏析という現象からもはや逃れることは難しいのだろうなと感じてきます。

「偏析」が工程に与える影響

「偏析」が工程に与える影響
こうした偏析という現象はプロセスのどの工程に影響を及ぼすのでしょう。書籍をもとに、各工程ごとの偏析による影響度の大小を上の図で色分けしてみました。

「偏析」が工程に与える影響度
1.粉砕工程:小
2.分級・ふるい分け工程:
3.混合工程:小
4.造粒成形工程:
5.乾燥工程:小
6.貯槽工程:
7.供給工程:
8.輸送工程:
9.集じん工程:小
10.計量工程:小
11.固液分離工程:小
12.反応工程:

偏析の影響が大きいのは貯槽、供給、輸送の工程で、中程度の影響度としては、分級・ふるい分け、造粒成形、反応の工程のようです。これらの影響度の評価も、すべての粉粒体に通用することではないのでしょう。ただ、これらの工程でトラブルを最小化するためには、偏析の要因となる「粒子の大きさ」「粒子の密度」「粒子の形状」の情報を得ておくと良いのかもしれません。

参考:偏析トラブルが生じやすい産業分野

(参考)偏析トラブルが生じやすい産業分野
文末の参考文献でもご紹介している書籍「粉粒体トラブルシューティング」に興味深いデータが記載されていました。
「産業分野別の偏析トラブル件数」というデータです。このデーターによると、偏析に関わるトラブルが無機材料医薬プラスチックなどで比較的多く生じていることが示されています。これ以外の産業分野として、鉱業、食品、色材、セメント、電子材料が挙げられています。もっとも、このデータで示されているセメントと電子材料の産業分野ではトラブル件数がゼロとなっていますが、一切、偏析現象によるトラブルが発生しないということではないだろうということは、弊社のわずかな経験からも容易に想像ができます。また同書籍には、工程として考え場合の偏析トラブルについても記載されています。偏析によるトラブルが生じやすい工程として、貯蔵供給(排出)混合といった工程で生じやすいと書かれています。いずれにしろ、これらは非常に興味深いデータではあるものの、いずれの産業分野、いずれの工程にしても、扱う粉粒体の固有論であろうことも容易に想像できそうです。

偏析トラブルが生じやすい産業分野
・無機材料:7
・医薬:5
・プラスチック:3
・鉱業:2
・食品:1
・色材:1
・セメント、電子材料:0
・その他:3

参考文献

「わかる!使える!粉体入門」山田 昌治 著
「粉粒体トラブルシューティング」柴田 力 著

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